労働時間とは?法律違反にならないための基礎知識
はじめに
労働時間は社員だけではなく、会社にとっても重要な事項のひとつです。
効率的に仕事を進めていくうえで、労働時間の把握は必須です。
社員の労働時間を記録し、問題点は無いか確認してみましょう。
労働時間とは
労働時間とは、始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間をいいます。この労働時間は、社員が会社の指揮命令下にある時間をいいます。
会社の明示または黙示の指示により社員が業務に従事する時間は、労働時間に該当します 。
労働時間の長さは法律で制限されており、労働基準法では、1日の労働時間を8時間以内、1週間の労働時間を40時間以内と決められています。ただし、常時9人以下の社員を使用する会社で、商業、映画・演劇業(映画製作の事業は除く)、保健衛生業、接客娯楽業については、1日8時間以内は同じですが、1週間44時間以内となっています。
※所定労働時間
会社において、就業規則、労働契約などによって決められた1日または1週間などの労働時間をいいます。
※法定労働時間
労基法32条または40条で定められている労働時間(1日8時間、1週間40時間または44時間)をいいます。
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労働時間に該当する場合と該当しない場合について
所定労働時間内の労働であれば、特に問題にはなりませんが、始業時刻前や終業時刻後に行われた社員の行為は、どのような場合に労働時間に該当するかが問題となります。
以下、ケースごとに解説します。
制服の着用について
労働時間に該当する事例
会社から制服着用を義務付けられている場合には、労働時間となります。その場合、社員が始業前に制服や作業服に着替え、保護具などを装着し、現場に移動するまでの時間は仕事の一環であるので労働時間です。同様に終業後、着替える時間も仕事のうちとなります。
労働時間に該当しない事例
更衣時間について、制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めているような場合には、労働時間に該当しません。
研修・教育訓練について
労働時間に該当する事例
- 会社が指定する社外研修について、休日に参加するように指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修
- 自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ、実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学。
労働時間に該当しない事例
- 終業後の夜間に行うため弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取り扱いもしない勉強会。
- 社員が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て、一人でまたは先輩社員に依頼し、会社からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練。
- 会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない。
仮眠時間について
労働時間に該当する事例
仮眠時間であっても、仮眠中に会社の指示により即時に業務に従事することが求められており、労働から離れることが保障されていなければ、会社の指揮命令下に置かれているものとして労働時間に該当します。
例えば、施設警備員について、仮眠時間中に十分な交代要員が確保されておらず、仮眠を取っている間に非常事態が発生した場合には即時に対応することが求められており、実際に仮眠中であっても即時に対応しなければならず、また、警備員室で仮眠をとることが義務付けられ、仮眠中も警備員の制服を着用することを義務付けられているような場合には、労働から解放されているとはいえないと考えられることから、労働時間に該当します。
労働時間に該当しない事例
仮眠室などにおける仮眠の時間について、電話等に対応する必要はなく、実際に業務を行うこともないような場合には、労働時間に該当しません。
例えば、週1回の交代で、夜間の緊急対応当番を決めているが、当番の社員は社用の携帯電話を持って帰宅した後は自由に過ごすことが認められている場合の当番日の待機時間は、労働時間には該当しません。
直行直帰や出張に伴う移動時間について
労働時間に該当する事例
移動時間については、会社が、業務に従事するために必要な移動を命じ、当該時間の自由利用が社員に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当します。
所定労働時間内に業務上必要な移動を行った時間については、一般的には、労働時間に該当すると考えられます。しかし、所定労働時間外であっても、自ら乗用車を運転して移動する場合、移動時間中にパソコンで資料作成を行う場合、車中の物品の監視を命じられた出張の場合、物品を運搬すること自体を目的とした出張の場合等であって、これらの社員の行為が会社から義務付けられ、又はこれを余儀なくされていたものであれば、労働時間に該当します。
労働時間に該当しない事例
直帰直帰・出張に伴う移動時間について、移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合には、労働時間に該当しません。
例えば、遠方に出張するため、仕事日の前日に当たる休日に、自宅から直接出張先に移動して前泊する場合の休日の移動時間は労働時間に該当しません。
手待時間について
労働時間に該当する事例
- 休憩中の当番
休憩中に電話や来客があった場合にはこれに対応して適宜処理することが要求されているような場合には、労働から離れることを保障されているとはいえないことから、仮に電話や来客がなかったとしても労働時間に該当します。 - トラック運転手の荷待ち時間等
荷積み、荷下ろし時間について、具体的な指示や連絡がいつ来るかわからないまま待機している場合や、車列で順番待ちを行わなければならない場合等労働から解放されているといえない時間は労働時間に該当します。
まとめ
以上、労働時間に該当する場合と該当しない場合について解説をしました。厚生労働省から令和3年3月に「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」が公表されています。この事例集は、これまでの裁判例や通達をまとめた内容となっており、参考になる資料です。自社の事例が判断に迷う場合は、労働基準監督署に相談することをお勧めします。
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投稿者プロフィール
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木戸社会保険労務士事務所の三代目の石田厳志と申します。当事務所は、私の祖父の初代所長木戸琢磨が昭和44年に開業し、長年に渡って企業の発展と、そしてそこで働く従業員の方々の福祉の向上を目指し、多くの皆様に支えられて社会保険労務士業を行ってまいりました。
当事務所は『労働保険・社会保険の手続』『給与計算』『就業規則の作成・労働トラブルの相談』『役所の調査への対応』『障害年金の請求』等を主たる業務としており、経営者の困り事を解決するために、日々尽力しています。経営者の方々の身近で頼れる相談相手をモットーに、きめ細かくお客様目線で真摯に対応させていただきます。
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