労働者を雇い入れた際に事業主がすべきことについて解説

はじめに

労働者を雇い入れようとするときは、労働条件などについてトラブルが起きないように、あらかじめ契約内容を明確にしておくことが大切です。
また、労働者の雇い入れにあたって、各種保険等の手続きが必要となります。注意すべきことについて解説していきます。

労働条件の明示

労働者の採用が決まったら、次は労働契約を結びます。
労働契約は、労働者が事業主に使用されて労働する義務を負い、事業主が労働者に対して賃金を支払う義務を負うことを内容とする契約です。
労働契約そのものは、労働契約書等の書面が無くても、「雇ってください」「雇います」という労働者と事業主の合意があれば、口頭だけでも成立します。
しかし、事業主は、労働者に対して労働条件を明確に示さなければならず、一定の事項については「書面」で明示しなければなりません。
「書面」で労働条件を明示することにより、トラブルを防ぐことも出来ます。

雇い入れ時に明示すべき事項

  1. 労働契約の期間に関する事項
  2. 就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
  3. 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
  4. 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  5. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
  6. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払い時期に関する事項
  7. 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  8. 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  9. 安全及び衛生に関する事項
  10. 職業訓練に関する事項
  11. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  12. 表彰及び制裁に関する事項
  13. 休職に関する事項

について明示しなければなりません。また、これらのうち①~⑤(④のうち、昇給に関する事項を除く)については書面の交付により明示しなければなりません。これらについて記載した労働条件通知書のひな形が厚生労働省ホームページに掲載されていますので、利用することをおすすめいたします。

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労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の備え付け

事業主は、労働者を採用した場合、「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」を作成しなければなりません。この3つを合わせて法定三帳簿と言われています。

労働者名簿

労働者名簿は、各事業場ごとに、各労働者(日々雇入れられる者を除く)について調製しなければなりません。また、記載事項に変更があった場合は、遅滞なく訂正しなければなりません。

労働者名簿の記載事項

  1. 労働者の氏名
  2. 生年月日
  3. 履歴
  4. 性別
  5. 住所
  6. 従事する業務の種類
  7. 雇入れの年月日
  8. 退職の年月日及びその事由(解雇の場合はその理由)
  9. 死亡の年月日及びその原因

賃金台帳

賃金台帳は、各事業場ごとに調製し、賃金支払いの都度、遅滞なく各労働者ごとに記入しなければなりません。

賃金台帳の記載事項

  1. 賃金計算の基礎となる事項
  2. 賃金の額
  3. 氏名
  4. 性別
  5. 賃金計算期間
  6. 労働日数
  7. 労働時間数
  8. 時間外労働、休日労働及び深夜労働の労働時間数
  9. 基本給、手当その他賃金の種類ごとにその金額
  10. 労使協定により賃金の一部を控除した場合はその額

出勤簿

出勤簿は、労働基準法の条文において、明確な規定はありません。
しかし、厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、事業主には労働時間を適正に把握する責任があると記載されています。そのため、出勤簿等により労働時間の記録を管理する必要があります。
事業主が始業・終業時刻を確認し、記録する方法は、原則として、次のいずれかの方法によることとされています。

  1. 事業主が自ら確認して、適正に記録すること。
  2. タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

雇用保険の手続き

労働者を雇い入れ、事業主と労働関係が始まると、労働保険と社会保険の適用事業所であれば、そこで使用される労働者はその被保険者となります。そのため、事業主は、雇い入れた労働者について資格取得届などの手続をする必要があります。
では、まず雇用保険から説明します。
労働者は、原則として、事業主から雇い入れられた日から雇用保険の被保険者となります。手続きとしては、「雇用保険被保険者資格取得届」を労働者が被保険者となった日の属する月の翌月(雇い入れた月の翌月)の10日までに、ハローワークに提出します。

社会保険の手続き

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の場合も、労働者は雇い入れられた日から被保険者となります。社会保険の手続きは、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を雇い入れた日から5日以内に年金事務所に提出します。
注意しなければならないのは、資格取得日です。社会保険料は、日割りで算出することはなく、たとえ1日のみだったとしても1ヶ月分の社会保険料が発生します。そのため、例えば6月26日から雇い入れたにもかかわらず、6月分の社会保険料を負担したくないために7月1日付けで資格取得届を提出する事業主がいらっしゃいます。それは、間違いで6月26日付けで資格取得届を提出しなければなりません。

さいごに

以上、労働者を雇い入れた際に事業主がすべきことについて説明をしてきました。今回は、主な流れだけを説明しています。その他にもすべきことや気を付けるべき点も多々あります。詳細について知りたい場合は、それぞれの役所で確認することをおすすめします。費用がかかってもまとめて知りたい場合は、木戸社会保険労務士事務までお問合せください。


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投稿者プロフィール

石田厳志
石田厳志
木戸社会保険労務士事務所の三代目の石田厳志と申します。当事務所は、私の祖父の初代所長木戸琢磨が昭和44年に開業し、長年に渡って企業の発展と、そしてそこで働く従業員の方々の福祉の向上を目指し、多くの皆様に支えられて社会保険労務士業を行ってまいりました。
当事務所は『労働保険・社会保険の手続』『給与計算』『就業規則の作成・労働トラブルの相談』『役所の調査への対応』『障害年金の請求』等を主たる業務としており、経営者の困り事を解決するために、日々尽力しています。経営者の方々の身近で頼れる相談相手をモットーに、きめ細かくお客様目線で真摯に対応させていただきます。