2022年4月からの改正育児介護休業法についての解説

2021年6月、国会において「改正育児・介護休業法」が成立しました。(同年6月9日の官報に公布)
少子化が進む日本において、非常に重要な育児と仕事の両立を推進すべく今回の法改正が実施されました。
2022年4月から順次施行されていきますので、何がどのように改正されたのか、どのような準備をするべきかを、しっかりと押さえていきましょう。

育児・介護休業法改正後のポイント

改正のポイントは、全部で5つあります。

  1. 雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化
  2. 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
  3. 出生時育児休業(通称:産後パパ育休)の創設
  4. 育児休業の分割取得
  5. 育児休業取得状況の公表の義務化

以下、順番に解説していきます。

1.雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

<2022年4月1日施行>

本人もしくは配偶者の妊娠・出産を申出た労働者に対して、以下の措置が義務付けられます。

●育児休業を取得しやすい雇用環境の整備(研修、相談窓口設置等)

①育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
②育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
③自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
④自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知

●妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

①育児休業・産後パパ育休に関する制度
②育児休業・産後パパ育休の申し出先
③育児休業給付に関すること
④労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い

1.について大事な点は二点あります。

✓育児休業の取得について労働者の意思を会社が直接確認することが必須

ただ制度を整備しておくだけでなく、個別面談等を通じて
「(本人もしく配偶者が)妊娠・出産をするならこのような制度が使えますよ」
「あなたは育児休業を取得しますか?」
と会社側が労働者の「育児休業取得」を奨励していきましょうという趣旨です。

✓育児休業に係る雇用環境の整備が必須

今後は労働者が育児休業を取得しやすいよう、研修の実施や相談体制の確立といった会社が積極的に協力していくことが求められていきます。

2.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

<2022年4月1日施行>

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和されます。

●改正前

(育児休業の場合)
①引き続き雇用された期間が1年以上
②1歳6か月までに間に契約が満了することが明らかでない

●改正後

①の要件を撤廃し、②のみに変更
※無期雇用労働者と同様の取り扱い
(引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外可)

3.出生時育児休業(通称:産後パパ育休)の創設

<2022年10月1日施行>

産後パパ育休(育休とは別に取得可能)現行育休制度
対象期間
取得可能日数
子の出生後8週間以内4週間まで取得可能原則、子が1歳(最長2歳)まで
申出期限原則休業の2週間前まで原則1か月前まで
分割取得分割して2回取得可能原則分割不可
休業中の就業労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲内で、事前に調整した上で休業中に就業することが可能原則就業不可

3.についての大事な点は二点あります。

✓出産直後の時期に柔軟に育児休業を取得できるようになる

子の出生直後、女性は産後休業(最大8週間)を取得できます。
この期間、その配偶者も育児のための休業が取得しやすいように、「出生時育児休業」が創設されます。

✓出生時・育児休業時に使える給付金制度の利用が可能

同時に成立した「雇用保険法」の改正により、出生時育児休業時に使える給付金制度も創設されます。現行の育児休業時と同様、出生時育児休業中も雇用保険からの所得補償を受けられるようになります。

4.育児休業の分割取得

<2022年10月1日施行>

育児休業が分割して取得できるようになります。

●改正前

・原則分割することはできない
・1歳以降に育休を延長する場合、育休開始日は1歳、1歳半の時点に限定

●改正後

・(新制度とは別に)分割して2回まで取得可能
・1歳以降に延長する場合について、育休開始日を柔軟化
 ※各期間途中でも夫婦交代を可能

5.育児休業取得状況の公表の義務化

<2023年4月1日施行>

常時雇用する労働者数が1,000人を超える事業主に対し、育児休業取得状況の公表が義務になります。
※公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」と省令で定める予定です。

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改正により企業に求められる対応

企業として対応すべきポイントは、3つあります。

  1. 育児休業を取得しやすい環境の整備
  2. 育児休業制度の個別周知・意向確認の実施
  3. 育児休業取得状況の公表(従業員1,000名超えの企業に限る)

ただし、3.は1,000名超えの企業なので、中小企業としては実質1.と2.が大事です。

また、育児休業等を理由とする不利益取り扱い・ハラスメントにご注意ください。

  • 育児休業等の申し出・取得を理由に、事業主が解雇や退職強要、契約変更等の不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。
  • 事業主には、上司や同僚からのハラスメントを防止する措置を講じることが義務付けられています。

下記は、ハラスメントの典型例ですので、お気を付けください。

  • 育児休業の取得について上司に相談したら「男のくせに育児休業を取るなんてあり得ない」と言われ、取得を諦めざるを得なかった。
  • 産後パパ育休の取得を周囲に伝えたら、同僚から「迷惑だ。自分なら取得しない。あなたもそうすべき」と言われ苦痛に感じた。

さいごに

以上、2022年4月から改正される育休・介護休業法を解説してきました。

求められるのは「仕事と育児が無理なく両立できる環境」です。

今回の改正により「男性育休」の取得を、より強化・推進していく狙いがあると考えられます。
厚生労働省が実施・公表した直近の調査(※令和2年度雇用均等基本調査_事業所調査)では、女性の育休取得率が80%台で推移する一方で、男性は15.8%と、年々増加傾向ではあるもののまだまだ十分とは言えない状況です。

社員が育休を取得しやすいように、積極的な声掛けや制度整備を進めていきましょう!


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投稿者プロフィール

石田厳志
石田厳志
木戸社会保険労務士事務所の三代目の石田厳志と申します。当事務所は、私の祖父の初代所長木戸琢磨が昭和44年に開業し、長年に渡って企業の発展と、そしてそこで働く従業員の方々の福祉の向上を目指し、多くの皆様に支えられて社会保険労務士業を行ってまいりました。
当事務所は『労働保険・社会保険の手続』『給与計算』『就業規則の作成・労働トラブルの相談』『役所の調査への対応』『障害年金の請求』等を主たる業務としており、経営者の困り事を解決するために、日々尽力しています。経営者の方々の身近で頼れる相談相手をモットーに、きめ細かくお客様目線で真摯に対応させていただきます。