法令違反を回避!SNSでの正しい求人情報の出し方

1.はじめに

近年、インターネットやSNSを活用した労働者募集が急速に普及しています。これにより、中小企業にとっても手軽に広範囲の求職者にアプローチできる手段となりました。しかし、募集情報を適切に記載しなければ、求職者に誤解を与え、法的トラブルに発展する可能性があります。本記事では、中小企業の経営者がSNS等を活用して労働者を募集する際に押さえておきたい法的注意点や具体的な記載方法を分かりやすく解説します。

2.労働者募集に関する法的背景

労働者募集の際には、職業安定法が適用されます。この法律では、求職者に対して虚偽や誤解を生じさせる表示を禁止しています。特にSNSやインターネット広告を利用する場合、情報の正確性が重要です。

たとえば、職業安定法では、虚偽表示や不適切な広告について明確に規定されており、違反すると罰則が科される可能性があります。中小企業がこの法律を遵守することは、信頼性の向上にもつながります。特に、SNSは不特定多数の人が閲覧可能なため、細心の注意を払いましょう。

3.必須記載事項の詳細

SNSで労働者を募集する際には、以下の6つの情報を正確に記載することが求められます。

募集主の氏名(名称)

企業名や個人事業主名を正確に記載することで、求職者が信頼できる情報源であると認識できます。例えば「株式会社〇〇」のように正式名称を用いましょう。

住所

勤務地やオフィス所在地を明記します。部屋番号やビル名まで正確に記載することで、求職者が安心して応募できます。

連絡先

電話番号、メールアドレス、公式ウェブサイト上の問い合わせフォームなど、確実に連絡が取れる手段を提供してください。

業務内容

募集する職種の具体的な仕事内容を簡潔かつ正確に記載します。曖昧な表現は避け、求職者が仕事内容を具体的にイメージできる情報を提供しましょう。

就業場所

勤務先の詳細住所を記載します。可能であれば「転勤の可能性」や「勤務地の変更範囲」についても触れると良いでしょう。

賃金

時給や月給、ボーナスの有無など、給与に関する具体的な情報を明示します。「時給〇〇円~」など幅を持たせた表記でも問題ありませんが、最低額を示すことで誤解を防ぎます。

4.SNSでの募集情報提供時の注意点

SNSで労働者を募集する場合、以下の点に注意しましょう。

情報の正確性を確保する

曖昧な表現や過度な誇張は避け、求職者が誤解しないよう具体的な内容を記載します。例えば、「楽しい職場」や「高待遇」といった表現だけでなく、具体的な職場環境や給与体系を示しましょう。

透明性を重視する

募集主や企業の詳細情報を明確に記載することで、求職者に安心感を与えます。特に、業務内容や勤務地を明示することは、信頼性を高める上で重要です。

③不適切な表現を避ける

「即日入金」や「高額バイト」といった誤解を招く表現は避けましょう。これらの表現は、求職者に不安を与える可能性があります。

5.労働条件の明示に関する最新の法改正

2024年4月1日から施行された法改正により、労働条件の明示項目が拡大しました。

具体的には、以下の事項が新たに追加されています。

①従事すべき業務の変更範囲

②就業場所の変更範囲

③有期労働契約の更新基準

これらの項目を適切に記載することで、求職者に対する情報提供の質を向上させることができます。詳しい内容については厚生労働省の公式ウェブサイトを参照してください。

6.違反時のリスクと罰則

職業安定法に違反すると、1年以上10年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。また、違反が発覚すると企業の信用が失墜し、採用活動全体に悪影響を及ぼします。

特に中小企業においては、信頼性のある募集情報を提供することで、優秀な人材を確保するチャンスを広げることが重要です。違反リスクを回避するためには、法令を遵守し、必要な情報を正確に提供することが不可欠です。

7.まとめ

SNSを活用した労働者募集は、中小企業にとって効率的かつ効果的な手段です。しかし、適切な情報を提供しなければ、求職者との信頼関係を築くどころか、法令違反によるトラブルや企業の信用失墜といったリスクを抱えることになります。本記事で解説したポイントを押さえ、職業安定法を遵守した募集情報を作成することで、求職者からの信頼を得るだけでなく、より良い人材を確保することが可能です。

また、適切な情報提供は、企業のブランディングにもつながります。正確で透明性の高い情報を発信し、求職者が「この企業で働きたい」と思えるような魅力的な募集内容を目指しましょう。そうすることで、労働市場においても企業の競争力を高めることができるでしょう。

投稿者プロフィール

石田厳志
石田厳志
木戸社会保険労務士事務所の三代目の石田厳志と申します。当事務所は、私の祖父の初代所長木戸琢磨が昭和44年に開業し、長年に渡って企業の発展と、そしてそこで働く従業員の方々の福祉の向上を目指し、多くの皆様に支えられて社会保険労務士業を行ってまいりました。
当事務所は『労働保険・社会保険の手続』『給与計算』『就業規則の作成・労働トラブルの相談』『役所の調査への対応』『障害年金の請求』等を主たる業務としており、経営者の困り事を解決するために、日々尽力しています。経営者の方々の身近で頼れる相談相手をモットーに、きめ細かくお客様目線で真摯に対応させていただきます。