中小企業必見!2024年の雇用保険改正ポイント総まとめ

1.はじめに

雇用保険は労働者の生活を支える重要な制度であり、特に中小企業の経営者にとってはその内容を理解し、適切に対応することが求められます。令和6年度の雇用保険の改正は、これまで以上に労働者を支援する内容が盛り込まれており、多様な働き方に対応した制度設計がされています。本記事では、改正の主なポイントをわかりやすく解説し、具体的な対応策を提案します。

2.雇用保険の適用拡大

改正の一つの大きなポイントは、雇用保険の適用範囲の拡大です。これまで、雇用保険の被保険者は週所定労働時間が20時間以上の労働者に限られていましたが、今回の改正でこの要件が10時間以上に引き下げられました。これにより、パートタイムや短時間労働者も雇用保険の対象となります。特に中小企業においては、パートタイム労働者が多いケースが見られるため、労働者のカバー範囲が広がることは企業にとっても重要です。

施行期日は令和10年10月1日です。この日からは、10時間以上働くすべての労働者が雇用保険の対象となります。この変更により、労働者の保護が強化され、企業側も適用対象の把握と手続きを早めに進める必要があります。

3.教育訓練やリ・スキリング支援の充実

労働者のスキルアップと再就職支援の一環として、教育訓練やリ・スキリング支援が充実されました。自己都合で退職した労働者が、自ら職業に関する教育訓練を受けた場合、これまであった給付制限が解除され、基本手当を受給できるようになります。施行日は、令和7年4月1日です。

さらに、教育訓練給付金の支給率が、従来の70%から80%に引き上げられました。これは、労働者が高い費用負担を感じることなく、専門的な教育訓練を受けられるようにするためです。例えば、専門実践教育訓練給付金については、受講後に賃金が上昇した場合、追加で10%の給付が行われるため、最大で80%の支給を受けることができます​ 。施行日は、令和6年10月1日です。

特に注目すべきは、新たに創設された教育訓練休暇給付金です。これは、労働者が教育訓練のために休暇を取得した際に、その期間中の生活費を支援するための給付金です。この制度により、労働者は経済的な不安を感じることなく、安心して訓練に集中することができます。具体的には、雇用保険被保険者が一定期間以上の被保険者期間を有している場合、基本手当に相当する額が支給されます。施行日は、令和7年10月1日です。

4.育児休業給付の財政基盤の強化

育児休業給付についても大きな改正が行われました。育児休業給付は、育児休業を取得する労働者が増加している中で、その財政基盤を強化する必要があります。今回の改正では、国庫負担割合が1/80から1/8に引き上げられました。この改正により、育児休業給付の財源が安定し、育児休業を取得する労働者への支援が強化されます。

また、保険料率についても調整が行われます。現在の0.4%から0.5%に引き上げられ、財政状況に応じて弾力的に調整される仕組みが導入されます。施行期日は、国庫負担割合の引き上げが令和6年4月1日、保険料率の調整が令和7年4月1日です。

5.離職者の給付制限の見直し

離職者の給付制限についても見直しが行われました。自己都合で離職した場合、これまでは待期満了後2ヶ月間の給付制限がありましたが、改正により1ヶ月に短縮されました。さらに、自ら教育訓練を行った場合には給付制限が解除されるようになりました。この改正により、離職者が早期に再就職活動を行いやすくなり、再就職の機会が増えることが期待されます。施行期日は2025年4月1日です。

6.中小企業への影響と対応策

今回の改正は中小企業にとっても大きな影響を与える可能性があります。特に、雇用保険の適用拡大や教育訓練支援の充実は、中小企業においても対応が必要です。労働者が安心して働ける環境を整えるために、企業は労働者の保険加入状況を把握し、適切な手続きを行うことが求められます。また、教育訓練支援の拡充に伴い、労働者のスキルアップを支援するための社内制度の整備も重要です。具体的には、労働者が教育訓練を受けやすい環境を整え、休暇取得時の支援策を検討することが必要です。また、育児休業給付の財政基盤強化に伴い、育児休業を取得する労働者へのサポート体制を整えることも重要です。中小企業は、これらの改正に対応するために、経営資源を有効に活用し、労働者のニーズに応える柔軟な対応を行うことが求められます。

7.まとめ

雇用保険法の改正は、多様な働き方に対応し、労働者の生活を支えるための重要な変更です。中小企業の経営者にとっても、この改正内容を理解し、適切に対応することが求められます。本記事で紹介した改正内容を踏まえ、労働者が安心して働ける環境を整えることが重要です。これにより、労働者の満足度を高め、企業の成長につなげることができるでしょう。

投稿者プロフィール

石田厳志
石田厳志
木戸社会保険労務士事務所の三代目の石田厳志と申します。当事務所は、私の祖父の初代所長木戸琢磨が昭和44年に開業し、長年に渡って企業の発展と、そしてそこで働く従業員の方々の福祉の向上を目指し、多くの皆様に支えられて社会保険労務士業を行ってまいりました。
当事務所は『労働保険・社会保険の手続』『給与計算』『就業規則の作成・労働トラブルの相談』『役所の調査への対応』『障害年金の請求』等を主たる業務としており、経営者の困り事を解決するために、日々尽力しています。経営者の方々の身近で頼れる相談相手をモットーに、きめ細かくお客様目線で真摯に対応させていただきます。