フリーランスとの健全な取引を目指す中小企業のためのポイントについて
1.はじめに
現在、働き方の多様性により中小企業の経営者が、日々の経営活動の中でフリーランスの活用を考えることは珍しいことではなくなりました。しかし、フリーランスとの適切な契約関係の構築は、法的リスクを避けるためにも非常に重要です。この記事では、偽装フリーランスの防止に焦点を当て、企業とフリーランス双方にとって健全な取引関係を築くための指針をご提案します。
2.業務委託と雇用の違い
業務委託では、仕事の成果物や達成されるべき目標が重視されます。つまり、フリーランスや外部の事業者は、契約で定められた成果をどのような方法で、どの時間帯に作業しても良いわけです。ここでの「働いた時間」は、成果を出すために実際に費やした時間には関心が向けられず、最終的な成果物の質や量が評価の基準となります。
一方で、雇用契約では従業員が会社にいる時間、すなわち「勤務時間」が基本となります。従業員は会社が定めた時間内で仕事をし、その時間を基に報酬が支払われるのです。ここでは、仕事の成果よりも、どれだけの時間を労働に費やしたかが報酬計算の主な基準になります。
要するに、業務委託は「何を成し遂げたか」が焦点であり、雇用契約は「どれだけの時間を会社のために働いたか」が重要になるという違いがあります。
3.フリーランス契約を支える主要な法律
フリーランスとして働く際、またはフリーランスに業務を委託する際、いくつかの法律が関わってきます。主要なものとして、独占禁止法、下請法、そしてフリーランス・事業者間取引適正化等法があります。これらの法律は、フリーランスと事業者間の公正な取引を保証し、不当な扱いや条件を防ぐために制定されました。独占禁止法は、フリーランスを含む全ての事業者が公正な競争を行うことを保障します。下請法は、大企業と小規模事業者間の取引において、後者が公正な扱いを受けることを確保することを目的としています。フリーランス新法は、フリーランスと事業者間の契約に関する透明性を高め、フリーランスが適正な報酬を受け取れるようにすることを意図しています。これらの法律を理解し、適切に適用することは、双方にとって安心してビジネスを行うための基盤となります。
4.労働者性の判断基準
労働者性の判断基準は、契約の形態にかかわらず、個人が実質的に「労働者」かどうかを評価するための基準です。これは特に、フリーランスや個人事業主といった自称独立契約者の立場が、実際には雇用関係に近いかどうかを明らかにする際に重要となります。
労働者性を判断する上で中心となるのは、「使用従属性」と「報酬の労務対償性」の二つの概念です。使用従属性は、個人が企業の指揮監督下で働いているかどうかを示します。これには、作業の場所や時間、作業方法が企業によって具体的に指定されているかどうかが含まれます。たとえば、個人が自由に働く場所や時間を選べない、または特定の業務手順に従う必要がある場合、使用従属性が高いと考えられます。
報酬の労務対償性は、支払われる報酬が労務提供の直接的な対価であるかどうかを示します。時間単位で報酬が支払われる場合や、仕事の成果ではなく働いた時間に基づいて報酬が決定される場合、労務対償性が認められ、労働者性が高いとされます。
さらに、労働者性を補強する要素として、事業者性の有無や専属性の度合いも考慮されます。例えば、個人が業務を遂行するために必要な道具や機材を自己の費用で提供している場合、事業者としての性質が強いと評価される可能性があります。また、複数のクライアントから独立して業務を受注している場合、専属性が低く、事業者性が認められることがあります。
労働者性の判断は、契約内容だけでなく、実際の働き方や取引の性質を総合的に評価することにより行われます。この判断基準を適切に理解し適用することで、企業は適法な契約関係を構築し、個人は自身の権利を適切に保護することができます。
※「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」より
5.偽装フリーランスを防止するチェックリスト
偽装フリーランスを防止するためのチェックリストを用意することで、法令遵守と公正な取引を促進します。このチェックリストを利用して、契約過程での検討事項を整理しましょう。
※一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会作成
「偽装フリーランス防止のための手引き」より
6.まとめ
この記事では、偽装フリーランスを防ぐための基本的なガイドラインを提供しました。適切な契約形態の選択、法律の遵守、そして労働者性の正確な評価は、中小企業経営者が直面する課題への対処に役立ちます。経営者とフリーランス双方が知識を共有し、理解を深めることで、信頼できるビジネス関係を築くことが可能です。
投稿者プロフィール
-
木戸社会保険労務士事務所の三代目の石田厳志と申します。当事務所は、私の祖父の初代所長木戸琢磨が昭和44年に開業し、長年に渡って企業の発展と、そしてそこで働く従業員の方々の福祉の向上を目指し、多くの皆様に支えられて社会保険労務士業を行ってまいりました。
当事務所は『労働保険・社会保険の手続』『給与計算』『就業規則の作成・労働トラブルの相談』『役所の調査への対応』『障害年金の請求』等を主たる業務としており、経営者の困り事を解決するために、日々尽力しています。経営者の方々の身近で頼れる相談相手をモットーに、きめ細かくお客様目線で真摯に対応させていただきます。
最新の投稿
- 三代目のブログ2024年11月1日従業員が辞めない!中小企業向けの新しい給与制度とは
- 三代目のブログ2024年10月1日中小企業に最適な「育てる人事制度」の導入方法とは
- 三代目のブログ2024年9月1日従業員の成長を支援する人事制度の重要性
- 三代目のブログ2024年8月1日従業員を脅す評価から育てる評価へ!効果的な人事制度改革の方法